最年少ビリオネアは29歳 成長を追い求め続ける国

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朝、あなたの種を蒔け、夕方も手を休めてはならない。あなたはどれが実るのかを知らないからだ。あれか、これか、または両方が同じように成功するかもしれない。

伝道の書11章6節

前回、「成長を放棄しつづけた日本」と題して、「分配競争」に興ずる国政選挙の姿への寂しさを記した。

この日本と対象的に成長し続ける国を象徴する記事が、ちょうどいいタイミングでフォーブス誌に掲載されていたので、簡単に紹介したい。

出典は、“15 Under 40: The Youngest Billionaires On The 2021 Forbes 400”(最も若いビリオネア15人は40歳未満:2021年フォーブス400)

毎年フォーブス誌が発表しているアメリカの資産家トップ400人のランキングで、今年2021年は年齢の若い順にみると15人が40歳未満だという記事だ。

最年少は29歳のSam Bankman-Fried(サム・バンクマン-フリード)。
2019年に暗号通貨の主要な取引所であるFTXを創設するなどして、現在の富を築いた。

最高額はMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)37歳。
ご存じ、Facebookの創業者で、資産額は約1345億ドル、日本円に換算して約15兆3734億円(執筆時点レート $1=104円30銭)。
札幌市の予算15年分に相当する途方もない額だ。
Forbes400全体でも第3位にランクイン。
ちなみに全体のトップはAmazon創業者のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)で、資産額2010億円(22兆9743億円)だ。

参考までに日本人のトップは孫正義さんで約454億ドル(5兆1892億円)。
2021年のフォーブス・ビリオネア・ランキングで29位にランクイン。
(注:フォーブス・ビリオネア・ランキングは世界を対象に毎年4月に発表、フォーブス400はアメリカ人を対象に毎年10月に発表)

29位でもすごいと思うかもしれないが、ビリオネア・ランキングが始まった1987年第1回のトップは堤義明さん(西武鉄道グループ元オーナー)。
その後1994年の第8回まで、この堤さんと森泰吉郎さん(森ビル創業者)とで日本人がトップを分け合っていた。
今のすっかり凋落した日本しか知らない若い人からすれば想像できないだろうが、懐かしき黄金のバブル期といった感じだ。

さて、本題に戻って、15人の若き大富豪をたちを年齢の若い順に一覧で紹介する。

順位名前年齢資産額属性業界
Sam Bankman-Fried 29225億ドル
(2兆5717億円)
FTX 創設者テクノロジー、金融
Evan Spiegel31138億ドル
(1兆5773億円)
Snap CEOテクノロジー
Bobby Murphy33152億ドル
(1兆7373億円)
Snap CTO テクノロジー
Fred Ehrsam3335億ドル
(4000億円)
Coinbase 創設者 テクノロジー、金融
5Lukas Walton35172億ドル
(1兆9660億円)
Walmart 創設者の孫小売
6Baiju Bhatt3629億ドル
(3315億円)
Robinhood 創業者 テクノロジー、金融
7 Mark Zuckerberg 371345億ドル
( 15兆3734億円 )
Facebook 創業者・CEOテクノロジー
8Dustin Moskovitz37241億ドル
(2兆7546億円)
Facebook 共同創設者 テクノロジー
9Brian Armstrong38115億ドル
(1兆3145億円)
Coinbase CEO テクノロジー、金融
10Nathan Blecharczyk38100億ドル
(1兆1430億円)
Airbnb 共同創設者テクノロジー、サービス
11Scott Duncan3862億ドル
(7087億ドル)
Enterprise Product Partners 創業者の子石油・ガス
12RJ Scaringe3834億ドル
(3886億円)
Rivian 創業者・CEO電気自動車
13Ernest Garcia, III.3993億ドル
(1兆630億円)
Carvana 創業者・CEO自動車関連サービス
14Lynsi Snyder3942億ドル
(4800億ドル)
In-N-Out Burger 社長フードサービス
15Ben Silbermann3933億ドル
(3772億ドル)
Pinterest 創業者・CEOテクノロジー

以上が15人の若き大富豪たちの顔ぶれだ。

大半がテック系企業の創業に関わった人たちだ。

いずれも世の中の動きや人々の潜在的なニーズを敏感に察知して、オリジナリティのあるビジネスアイデアとして企画・立案し、勇気をもってチャレンジしてきた人たちだ。

こういった若い人たちが次から次へと出てくるのが、アメリカのすごさだ。
産業と人財の新陳代謝が、世界をリードし続けるアメリカの成長の源泉だ。

前回の拙稿で述べた、「変わらろうとしない日本」の残念な姿とは対極的な躍動感がそこにはある。

そしてもう一つ、アメリカと日本の盛衰を分ける大きな要因を、 最年少のSam Bankman-Fried(サム・バンクマン-フリード) の紹介コメントの中に見た。

20代で事業に成功し大富豪となった彼は、その資産の多くを、”earning to give,”という利他主義の哲学に基づいて、チャリティー団体に寄付するのだという。

欧米の豊かさを支えてきたのが「寄付の文化」だ。

事業で大きな成功を成し遂げた人の多くが、自分が大切にする人たちや分野に寄付をする。

自分の成長と成功を支えてくれた社会に恩返しをして、自分が享受できた豊かさを未来に引き継いでいこうという高いレベルの思想がそこにはある。

鉄鋼王カーネギーが残した、カーネギー図書館やカーネギーホール。名門カーネギーメロン大学も氏の慈善活動から生まれた。

ビル・ゲイツがマイクロソフトの成功の結実として立ち上げたビル&メリンダ財団は世界最大の慈善基金財団として、ヘルスケアなどの分野での科学技術の進歩に大きな役割を果たしている。

ハーバード大学の卒業生からの寄付で組成されているハーバード大学基金は4兆円以上の規模に上り、大学の運営と後輩たちのために利用されている。

アメリカでは、こういった寄付には税の控除がきちんとなされる。
多くの欧米先進国でも同様だ。

寄付は社会を支える重要な心遣いであり、そのために利用されたお金には当然のように税金なんか掛けない。

これに対し、日本は寄付に対する思想が貧困で、控除などの寄付を促す仕組みがほとんどない。

金持ちはえげつなく金儲けしているんだから、遠慮なく税金をどんどん取ってやれ、ということなのか。
成功者がどのような高邁な思想を持ってお金を社会に還元しようとしても、税金は懲罰的に容赦なく掛けられる。

これでは寄付文化なんて根付くはずもない。

寄付でも税金でも社会に還元されるのならばどちらでもよい、というような意見もあるかもしれない。
しかし、寄付には税より優れている点がある。

税金は納税者の意思を反映することができないが、寄付は寄付者の意思を色濃く反映できることだ。

寄付した方は、「こういうことに役立てたい」という明確な意思をもって寄付をする。
そして大半がその意志に沿って活用される。

一般に優れた成功を成し遂げた人間というのは、お金の使い方が上手だ
どう使えば顧客が喜び、顧客の課題を解決し、効率的にリターンを享受し再投資できるのか。
このように考えて賢くお金を使うのが得意なのだ。だから成功して金持ちになれたのだ

なのでこういう寄付の大半が、社会問題の解決や人類の進歩に大きな貢献を果たしてきている。

一方で、税金の使い道を決めるのは誰か?
お役人か政治家、そして自分たちに還元・分配しろと要求し続ける人たちや組織。
果たして、お金の効率的利用が得意な人たちだろうか?

寄付控除で税額を減らすことは、財政悪化と不適切な再分配を招くと主張して、寄付優遇を固くなに拒否し続けてきた財務省(旧 大蔵省)。

彼らが正しかったかどうかをボクごときが正確に検証できるものではないが、巨額の財政赤字を抱え、30年も成長は停滞し、未来への見通しもおぼつかない我が国の現状を鑑みると、少なくともボク自身としては賛同できない。

もっと夢を語れる人に賢く、人と未来に優しくお金を使えってもらえるような制度改革を期待したいものだ。

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