PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)2022 オープニングコンサートに行ってきました

大好き札幌
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7月16日、PMF2022が開幕しました。
1990年に20世紀最大の音楽家の一人である故レナード・バーンスタインが、人生の最後に取り組むべき事業として若手音楽家の育成を理念に創設したPMF。
今年で32回目を迎えます。
一昨年はコロナによりやむなく中止。
昨年は、海外のアカデミー生や講師陣を招かずに、国内のアカデミー生・講師・卒業生のみで開催を試みるも、期間中に関係者がコロナ陽性となり途中で中断を余儀なくされました。

夏の札幌を音楽で彩る PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)2021開幕! 
2021年7月23日、昨年のコロナによるまさかの中止から待つこと1年。いよいよ開幕です!こう言うと、巷では”TOKYO2020”なんでしょうが、ボクにとっては ”PMF2021” こちらの方が待ち遠しかった。オリンピックの...

それらを乗り越えて、今年は海外からもアカデミー生と素晴らしい講師陣を招く、本来のPMFオーケストラが3年ぶりに帰ってきました。
PMFは札幌が持っている最高の至宝だと信じて疑わないボクにとっては、涙が出るほど嬉しいのです。家族揃って16日のオープニングコンサートへと出掛けてきました。

オープニングコンサートを指揮するのは、ケン=デイヴィッド・マズア
ドイツの巨匠クルト・マズアと日本人ソプラノ歌手桜井偕子の息子で現在45歳。PMFには今回が初参加だと思います。
長身スリムのイケメンで、長い腕からダイナミックに繰り出される切れ味抜群の指揮はとにかくカッコいいの一言。

オーケストラは、アカデミー生によるPMFオーケストラとヨーロッパ在籍の指導陣からなるPMFヨーロッパの合体で構成。
PMFヨーロッパのメンバーは、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団という世界最高峰の二大オーケストラのメンバーから構成される豪華メンバー。
この日もウィーンフィルの元コンサートマスターであるライナー・キュッヒルがコンサートマスターを務めるなど、豪華メンバーがズラリ。
普段はテレビの向こうにいるライナー・キュッヒルやダニエル・フロシャウアーなどの姿がすぐ目の前に。
PMFはやっぱり凄い!

コンサートのオープニングはお約束のレナード・バーンスタイン「キャンディード」
PMFのオープニングといえばこれしかありません。
ゴージャスで華やかな雰囲気で祭りの幕開けを高らかに宣言します。

二曲目はベートーヴェン作曲「ヴァイオリン、チェロとピアノのための三重協奏曲」
個人的にはこの日のメインとして最も楽しみにしていたのがこちら。
ベートーヴェンは多くの弦楽四重奏曲など素晴らしい弦楽曲を残しており、ヴァイオリン・チェロ・ピアノの三重奏と管弦楽とがどんな饗宴となるのか。
三重奏はヴァイオリン金川真弓、チェロ上野通明、ピアノ北村朋幹
いずれも1990年代生まれの新進気鋭の若手で、アカデミー生たちとも同世代の彼らがどのような演奏をするのか、こちらも大いに興味がそそられます。
で、実際の演奏の方はといえば、予想を大いに裏切るものでした。いい意味で。
期待をはるかに凌駕する素晴らしい饗宴でした。
三人の若手ソリストたちのそれぞれ競い合うような、それでいてお互い表に出たり裏方で支え合うような掛け合い。
勢いと個性、理性が憎らしいほどに調和して言葉にできないような熱い世界を創り上げていました。
中でもチェリストの上野通明さんの存在感は抜群。ジュネーヴ国際コンクール チェロ部門で日本人初の優勝という快挙は伊達ではありませんでした。

三曲目は、シルヴェストロフ「讃歌2001」
ウクライナ出身のヴァレンティン・シルヴェストロフによる作曲で日本初演奏ということです。
しばらくの沈黙から始まる美しく穏やかな弦楽の調べは、心を鎮め静かな世界へいざなってくれるものでした。
ロシアのウクライナ侵攻という辛い現実を受け、平和を希求するPMFとしてこの曲が取り上げられました。
この讃歌がつくり出すような静かで穏やかな世界が、ウクライナに一日も早く取り戻されることを祈らずにいられません。

コンサートを締めくくるのは、メンデルスゾーン作曲「交響曲第5番 ”宗教改革”」
ユダヤ人である若き日のメンデスゾーンがルターの信仰告白300周年を記念して作曲したこの交響曲は、プロテスタントの讃美歌の旋律などが数多く盛り込まれるなど美しく荘厳な一曲。
これをケン=デイヴィッド・マズアが見事な風格で指揮し、PMFヨーロッパの熟練した巨匠たちがアカデミー生たちを引っ張りながら、宗教改革の世界と反ユダヤに対するメンデルスゾーンの苦悩を見事に創り上げていました。

第1回PMFのバーンスタイン

PMF2022は7月31日(日)のGALAコンサートまでの約半月間、北海道内各所で演奏会や関連行事を行い夏の札幌・北海道を音楽で彩ります。
そして8月2日の東京公演で今年のPMFは幕を閉じることになります。

今年の主任指揮者はイスラエル出身の若きピアニスト・指揮者ラハフ・シャニ
まだ33歳ですが、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を2020年から務めている注目の若手音楽家です。
ボクはもともとイスラエル・フィルが大好きなこともあって、今年は彼の演奏を見るのをとても楽しみしています。
YouTubeなどで彼の指揮によるイスラエル・フィルの演奏などをいくつか見ましたが、すっかり虜になりました。
7月31日のGALAコンサートでは彼が振るので、今から待ち遠しいです。
本当は前日のピクニックコンサートも行きたいのですが、用事があって行けないのがとても残念です。でもGALAコンサートと同じプログラムなので良しとしましょう。

また、演奏会の他に教育音楽祭であるPMFならでは楽しみ方として、PMFマスタークラスオープンリハーサルといった、練習風景の一般公開プログラムがあります。
オープンリハーサルは25歳以下の方や対象コンサートのチケットを持っている方、PMFフレンズ(賛助会員)の方は無料で見ることができます。

ボクもPMFフレンズ会員で時々リハーサルを見に行ったりします。
普段は見られない楽屋裏の音楽家たちの真剣な姿が見られたり、指揮者によって指導の仕方やこだわりなどにいろいろと違いがあったりして、見ていてとっても楽しいです。
ご興味のある方は是非足を運んではいかがでしょう。絶対にお勧めです!

オープニングコンサートでPMF組織委員会理事長として主催者挨拶に立った秋元克広札幌市長が挨拶の中でこんなことをおっしゃってました。
「Pacific Music FestivalのPacificという言葉には、”太平洋”という意味の他に”平和な”という意味があります。」

コロナの脅威、ウクライナ侵攻、世界的な格差の拡大や自由と民主主義の後退などなど、不安定さや対立、未知の脅威に晒されている我々人類。
PMFがその名が示す通り「平和な音楽の祭典」として、世界で果たすべき役割や期待はますます大きくなっていくものと思います。
巨匠バーンスタインが残した世界的な教育音楽祭としての偉大なレガシーとしてのPMF。
そして今、人類の平和を希求する貴重な営みとしてPMF。
この札幌にそんな人類の貴重な財産があることを誇りに思い、そしてそれにふさわしい姿で未来に引継ぎ発展させていくことがとても大切なのだと、心から思っています。

この夏、PMFの調べに耳を傾けながら、人類の未来に思いを馳せてみませんか。

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