前回、PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)の開幕についてレポートしましたが、7月23日のオープニングコンサートに引き続き、調子に乗って7月25日の豊平館コンサートにも行ってきました。
豊平館は、明治初期の北海道開拓使によって建てられた本格西洋建築物で、国指定重要文化財です。
この文化財の中で行われたミニコンサートがとっても素敵でしたので、こちらもレポートします。
札幌で最初のホテル 豊平館
札幌市民にはお馴染みの豊平館。
現在は、明治初期のたたずまいを忍ばせる国指定重要文化財として、観光や市民活動の場として広く利用されておりますが、もともとは北海道開拓初期に、来札者の宿泊所として建設されました。
1879(明治12)年に建設開始、翌1880(明治13)年秋に本館が完成。
門やフェンス、付属設備など全てが完成したのは、その翌年1881年8月です。
この1881年8月は、北海道、そして開拓使にとって大変重要なイベントがありました。
1881年8月から9月にかけて、明治天皇が初めて北海道を行幸され、豊平館は札幌での行在所とされたのです。
おそらく、明治天皇が豊平館最初のお客様だったのではないでしょうか。
この北海道巡行の名残は北海道内各地に今も残されており、札幌市内では当時屯田兵村であった山鼻村(現在の札幌市中央区山鼻地区)を訪れた際に通られた経路が、後に明治44年、まだ皇太子であった大正天皇の行啓ルートと再度なり、今でも「行啓通」の名で残されています。
当初は現在の札幌市中心部、現在札幌市民ホールのある北1条西1丁目にありましたが、その後都心の開発が進み、市民会館の建築に合わせて、1958(昭和33)年、現在の閑静な中島公園の地に移築保存されることとなりました。
以来、札幌の重要な文化財、観光資源として、また結婚式場など市民の集いの場として、札幌の発展を見つめてきました。
そういう意味でも、札幌の至宝であるPMFの調べを奏でる場として、まさにうってつけの施設だと思います。
演奏会の様子
演奏会の方は、弦楽、管楽による小構成のものが5曲。
PMFアカデミーメンバー10名に加え、かつてのPMFの修了生、地元で活動する演奏家がお一人ずつ計13名が参加し、各曲2~3名の構成で各自1曲ずつ担当。
プログラムは以下のとおりです。
- シュボア:2つのヴァイオリンのための二重奏曲 作品9-2
- オーリック:木管三重奏曲(構成:オーボエ、クラリネット、ファゴット)
- ハイドン:バイオリンとヴィオラのためのソナタ第1番ヘ長調
- ドヴォルザーク:2つのヴァイオリンとヴィオラのためのミニチュア 作品75a
- J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調 BWV1043(構成:ヴァイオリン2、ピアノ)
当時をしのばせるサロン風の部屋で聞くクラシックの調べは何とも言えない優雅さです。
期待以上に音響も素晴らしく、弦や管の音が一つ一つ立体感を持って飛び込んできます。
アカデミーメンバーも、多少緊張の様子がみえる方もいましたが、さすが総じてレベルがしっかりしていて、大満足の演奏。
どの演奏も甲乙つけがたいですが、個人的にはやはり同じ楽器だけの構成より、違った楽器が混ざった方が幅が出てきて面白いなという印象。
そういう意味では、ドヴォルザークでヴィオラが2つのヴァイオリンを支えながらリードする演奏は引き込まれるものがありましたし、最後のバッハのピアノとヴァイオリンのコンビネーションも素敵でした。
また、木管三重奏もそれぞれの楽器の華やかさが出てとっても優雅でした。
個人的にはオーボエの丸みのある音がとっても心地よかったな。
1時間15分ほどの演奏時間があっという間に過ぎてしまう感じでしたが、とてもとても素敵な時間でした。
札幌の文化的財産を有効活用しよう
豊平館がある中島公園は、札幌中心部から少し離れただけの好立地でありながら、緑豊かな緑豊かなたたずまいの中に数多くの文化的建築物などが点在する市民自慢の憩いの場。
PMFや札幌交響楽団の本拠地である札幌コンサートホールkitaraもこの公園の中にあります。
まさに音楽の都 札幌のシンボルとしてこれ以上ないような環境に恵まれています。
札幌市や市内の音楽関係者も、kitaraとともに豊平館ももっともっと有効活用して、すてきな企画を市民や国内外にアピールしていってはどうかと思います。
また一般市民も、普段はレンタルルームとして、かなりお手頃な価格で利用できます。
音楽会や楽器の練習、パーティーやイベントなどの会場としてもすごくご機嫌な雰囲気なので、先人が残してくれたこの札幌の素敵な文化的遺産を、より多くの人で有効利用していったらよいと思います。
ボクも何か企画してみたいなぁ…、なんて妄想しながら、演奏会の間にすっかり日が落ちてライトアップされた、美しい豊平館を後にしました。
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