十勝に住むいとこがマンゴーを送ってくれました。
正確に言うと、ボクに送ってくれたのではなく、ボクの両親に送ってくれたもののお裾分けです。
小洒落た箱に入っている、いかにも高級そうなやつです。
ところでこのマンゴー、いとこが買って送ってくれたのではありません。
自分で栽培して収穫したマンゴーです。
それも自分の住んでいる北海道・十勝で。
メイドイン・北海道。メイドイン・十勝のマンゴーです。
その名も「白銀の太陽」。素敵な名前でしょ!
自然エネルギーで南国を再現 温泉熱と雪氷冷熱の活用
このマンゴーを作っているのは、帯広市に本社を構える株式会社ノラワークスジャパン。
社長がこれを送ってくれたボクのいとこです。
親戚が作ってるからしょっちゅう食べてるんだろうって?
いえいえ、送ってくれたのは何とこれが初めて(それもボクにではなくて、ボクの両親にです)。
それも無理はありません。
このマンゴー、大人気でなかなか手に入らないのです。
ホームページを見ると、なんと驚愕の全品SOLD OUT!
お値段の方も1個数千円するはず。
高いものだと数万円にもなるそうです。
大半は本州の高級デパートや高級フルーツショップなどに出荷され、規格外のいわゆる「はねもの」でも千疋屋などで高級フルーツ菓子の材料として重宝されています。
そんなわけで我々親戚もめったに口にすることなどできないのです。
さて、肝心のお味の方は?
立派な商品説明書が付いていて、食べ方も書いてありましたので、その通り慎重に剥きました。
さて、まず一切れをゆっくりと口に運ぶと…、
んー、甘い!
爽やかで上品な甘さが口いっぱいに広がります。
その余韻に浸っていると…、
子どもたちが襲い掛かり、あっという間に右の写真のような姿に。
これを丁寧に削いで、結局これがボクの取り分に(;▽;)
この「白銀の太陽」は、ノラワークスが生産しているもののうちで、糖度15度以上のものだけを激選して名付けているブランドです。
この基準に満たないものは「十勝マンゴー」という別ブランド名で販売されています。
国内でマンゴー生産で有名なのは沖縄県や宮崎県ですが、これらの最高級マンゴーと同レベルの甘さと味を実現しています。
ここで栽培されているマンゴーは宮崎の農園から種を分けてもらったものなので、理論的には同じような味になるのでしょうが、それは南国だったらの話です。
どうして雪国北海道で南国のトロピカルフルーツを本来のクオリティで栽培できるのでしょう。
それを実現させたのが、温泉と雪なんです。
グリーンハウスの中を冬季間温泉熱で温めて、30度以上の真夏の状態をつくるのです。
そして夏は冬に貯めておいた雪でハウス内を冷やして、冬を演出します。
冬といっても、南国の冬なので少し涼しい程度で十分です。
こうして、十勝に自然にあるものを活用することで、グリーンハウスの中に南国を再現してマンゴー栽培に成功したのです。
まさに再生エネルギーによるクリーン農業ですね。
さらにハウス内は害虫がいませんので無農薬。
完璧なクリーン農業です。
季節を逆転して、クリスマスに出荷
この、北国でマンゴーを作るなんていう非常識なプロジェクトは、十数年前にいとこが宮崎のマンゴー農家と親密になったところから始まります。
「温泉を使えば常夏の環境が作れる」と考えた彼は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金に応募。
見事採択され、小さなグリーンハウスで実証実験を開始。
宮崎の友人からもアドバイスを受けながら、栽培初年度から比較的品質の良いマンゴーの生産に成功します。
この北国産のマンゴーは、彼が睨んだとおり驚きと関心を呼び、大きな注目を集めました。
メディアなどにも取り上げられ、少しずつ販路が広がっていきます。
もちろん、雪国とマンゴーというギャップで注目され、品質も高いのがこの商品の「ウリ」なのですが、実はもう一つ重要な秘訣があるのです。
この重要な「目論見」があったからこそ、このプロジェクトにチャレンジしようということになったのです。
先ほど、冬に温泉熱で夏を作り、夏に雪で冷やして冬をつくると言いました。
つまり、季節を逆転させています。
なぜそんなことをするのでしょう?
夏は十勝も結構熱くなるのでハウスなら十分に「南国」になりますし、冬だけ少し温めてやればマンゴーが育つ環境にはなりそうです。
次の表を見てください。宮崎県とノラワークスの栽培スケジュールの比較です。
マンゴーは寒い時期に開花し、夏を迎える前頃が収穫時期になります。
宮崎だけでなく、沖縄や台湾あたりのマンゴーも基本このサイクルです。
ノラワークスのマンゴーはこの季節を逆転させ、ライバル商品と違う時期に流通させようという戦略を描いたのです。
さらに、ライバルがいないだけではありません。
高級フルーツやケーキなどの最大の消費時期は冬なんだそうです。
そう、もうおわかりですね。クリスマスです!
そして、お歳暮、贈答の時期でもあります。
年末年始に家族が集まり、多少高くても食材が一番売れる時期です。
この「目論見」は見事に当たりました。
販売は順調に拡大し、現在はハウス3基で安定的に生産・出荷する体制にまで成長しました。
いよいよマツコの口に⁉
このマンゴー、これまでメディアにもいろいろと取り上げられてきました。
北海道ローカルはもちろん、全国番組でもしばしば取り上げられています。
2016年には、カンブリア宮殿にも登場(”伝統は革新だ!”第3弾老舗高級果物店のフルーツ革命)。
そして、いよいよあのマツコの目に留まりました。
明後日2月22日、『マツコの知らない世界』で極寒地十勝で作られる北国マンゴー「白銀の太陽」が取り上げられます。
どんなふうに取り上げられるのか本当に楽しみです。
ご都合の着く方はご覧になってみてください。
マツコさんは、ライフスタイルや食べ物に関しては超インフルエンサーですよね。
以前ボクが関わっていた「シロクマラーメン」もマツコさんがテレビで取り上げた翌日から異常なブレイクをしましたから。
最後に、この「白銀の太陽」、本当にこれからの北海道が目指す方向性が凝縮された事業だと思います。
何も親戚がやっているから言うのではありません。
日本の食糧基地 北海道
農業大国 十勝
品質の優れた食品を作り、戦略的なマーケティングで市場を勝ち得ていく。
これからの食産業の目指すべき考え方がそこにあります。
温泉や雪、そして大地に降り注ぐ太陽という自然エネルギーだけで付加価値の高いものを生産しています。
脱炭素、カーボンニュートラルが世界的な課題になっており、将来の住みよい地球のために、環境に最大限配慮した生産活動を模索していくという考え方が重要であることは言うまでもありません。
北海道は昨年、「ゼロカーボン北海道」を戦略の一つの柱として位置付けました。
そういう意味からも、「白銀の太陽」が単に珍しく美味しい果物ということだけではなく、ゼローカーボンを目指す上での一つのシンボルとなっていけばいいなと期待します。
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