豪雪の札幌で考える(第2回) 札幌の除排雪事業は続けられるのか? 観光税が雪国の生活を救う⁉

大好き札幌
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前回紹介してきたように、いろいろと工夫を凝らしながら講じている札幌市の除排雪体制ですが、近年は維持するのが難しくなってきています。

除排雪事業を取り巻く厳しい状況を打開するのは簡単ではないと思いますが、悲観的なことばかり書いても前向きではありませんので、今回はボクが考える解決アイデアを記してみたいと思います。
思い付きレベルだとか、稚拙だとか思われるものもあるかもしれませんがご容赦を!

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市内中心部に雪堆積場を確保

かつては豊平川の河川敷が市内の主要は雪捨て場の一つになっていました。
しかし近年、河川周辺環境の保全や水害予防などの観点から、河川敷の利用が難しくなりその数は激減しています。
代わりに河川敷は公園やグラウンド、パークゴルフ場などへと姿を変え、雪解けが遅くなる雪捨て場としての利用はこの点でも逆風になっています。

その結果、市内中心部から大型の雪捨て場が減り、排雪運搬の回転数が減少して効率が著しく悪化することになり、コストも上昇してしまったことが、雪対策事業の推進上、効率面でも財政面でも大きな圧迫要因になっています。

これを解決するには、綺麗ごとを抜きに中心部での雪堆積場確保を大胆かつ真剣に行うしかありません。

考えられる場所は、かつて利用していた①豊平川河川敷か、②中心部の大規模な公園(中島公園、円山公園、大通公園、月寒公園、農試公園など)辺りでしょうか。

①は、河川を所管する国土交通省(北海道開発局)や環境省、防災を所管する内閣府などとのタフな折衝が必要になります。
また、環境悪化や騒音などを理由に反対する住民も少なくないと予想されます。

②は、市有地であれば市の裁量で進められます。
ただ、公園としての利用に甚大な影響が出ますので、それとの天秤に掛けた判断が求められます。
雪を貯めると当然雪解けが遅れ、公園利用に支障をきたします。
また、雪とともにゴミや泥・砂なども運び込まれるので、その対処も必要になります。
そういったデメリットに対する市民の反対もおそらく少なくないでしょう。

いずれにしてもハードルは低くないですが、冬期間の道路の現状や市民生活や経済活動に与えるマイナス影響などを考えたときに、どちらのデメリットを享受すべきかはしっかりと議論すべき時期に来ていると思います。
その結果、雪対策がより重要だという判断となれば、そのハードルを超えていけるようにチャレンジしていくべきと考えます。
国との折衝が必要となれば、勇気をもって真剣に訴えていく。
住民との対話が必要であれば何度でも丁寧に議論を尽くす。
そういう姿勢をもって、市内の雪堆積場確保を真剣に進めていかないと、雪対策事業の持続可能性を大きく損ねてしまいます。

札幌市には是非勇気をもって、議論をスタートさせてほしいと心から願います。
そうしなければ、遠くない未来、 札幌は雪に埋もれて辛いだけの冬を迎えることになってしまうかもしれません。

作業従事者の待遇改善

作業員の高齢化が進み、若い人が入ってこないのなら、基本的なことですが若い人が従事できる環境を整えなくてはいけません。
除排雪を主に担う建設業自体がそもそも若い人たちにあまり人気がなく、人材が集まらないのです。

そのため市も業界団体も建設業界のイメージアップなどに力を入れてますが、そんな綺麗ごとでは根本的な解決にはならないと感じます。
仕事を選ぶ際の基準となるのは、「やりがい」や「関心」なども大きいですが、「処遇」も重大な現実です。
「処遇」に関して最も大きなファクターになるのが、やはり賃金水準でしょう。

かつて建設業は体を酷使する厳しく危険でもある仕事ながらも、それに見合う比較的高い収入を望む人たちが集まっていました。
しかしながら、一時公共事業の負の側面がクローズアップされ、建設業を取り巻く環境は著しく悪化してしまいました。
きつくて危険だが高い収入が期待できた建設業は、きつくて危険なのに普通の収入に甘んじなくてはならない割の合わない仕事に変わってしまいました。
やはり、この点を再度見直していかなくては人は集まらないと考えます。
今の若い人たちは「休み」や「働きやすさ」などを以前より重視するようになってきましたが、やはり高収入を望む人たちも一定程度いると思います。

そういった意味では、公共事業も受注事業者が適正な利益を享受し人材も確保できるように発注の額や入札・契約などの考え方も変えていかなくてはならないと思います。
地方公共団体も国土交通省の「建設単価」を金科玉条のごとく妄信するのではなく、地域の現実に即し、中小零細企業の持続的な事業活動を可能ならしめる事業費や発注方法を自発的に模索すべき時期に来ている確信します。

そしてそうしなければ、遠くない未来、 札幌は雪に埋もれて辛いだけの冬を迎えることになってしまうかもしれません。

ICT化・AI化のダイナミックな推進

従事する人が減少しているなら、テクノロジーで補完していくことも重要です。
国は建設業のICT化などを謳い、技術開発や導入に力を入れていますが、まだまだ十分とは言えないレベルと思います。
そもそも、日本はデータの活用や新たなテクノロジーの導入などに対して、制度の硬直性でも人々のメンタル面でも諸外国に比べてハードルが高く、デジタル社会の成熟レベルは周回遅れだといわれています。
ICTやAIなどの技術に活路を見い出し、自動運転、省力運転、最適運行管理などのシステムを追及してくことが不可欠です。

さらに雪対策に関する技術開発は、積雪寒冷地の事業者や自治体などが自ら進めていかないと、誰もやってくれません。
通常の建設機械や農機具などのように世界中どこでも使う汎用性のある物であれば、クボタやコマツなどの大企業が開発していくでしょう。
自動運転であればグーグルやアップル、トヨタなどがしのぎを削っています。

でも、建設機械を自動化するところまでは彼らの開発を待っていれば進むかもしれませんが、それらを公道上で雪を処理す特殊な作業に適用させていくことは彼らの関心外でしょう。
雪国特有の課題解決は雪国が自発的に行う必要があります。
札幌がICTの先進地・集積地を標榜するのであれば、地域課題の解決に具体的に適用できるような技術やシステムの開発を、もっと踏み込んでダイナミックに促していくべきと考えます。

そしてそうしなければ、遠くない未来、 札幌は雪に埋もれて辛いだけの冬を迎えることになってしまうかもしれません。

除排雪のための特定財源を創設

除排雪予算がある程度膨張するのが避けられないのであれば、自治体で充当できる財源を増やすのも一案かと。
ただ、現行の地方自治制度の縛りの中で、通常の財源から十分な事業費を捻出するのは容易ではありません。

実はボクは10年以上前から、ある独自財源、いわゆるある「目的税」を構築することで、雪対策にも活用できるのではないかと構想していました

その目的税が「観光目的税」です。

観光目的税は、ある地域に訪れてきた方から何らかの形で消費税をいただき、地域の観光振興財源に充当しようとするものです。
国内では、古くは東京の宿泊税などから始まり、近年、多くの自治体で検討・導入されてきていました。
道内でも倶知安町が導入したのを皮切りに、北海道をはじめいくつかの市町村で検討が盛んになり、札幌でも数年前から導入検討が本格的に始まりました。

しかし、せっかく機運が盛り上がった観光目的税も、新型コロナウィルスの感染拡大により、今は一旦その議論がストップしています。

ボクはかつて住んでいたシンガポールでCESSという観光目的税が極めて効果的に機能しているのを目の当たりにし、インバンドの黎明期にあった北海道でも観光振興のために有効なのではないかと、15年以上前から独自に妄想していました。
特に、冬の観光が目玉である北海道においては、冬季間の移動をスムースで快適なものにしていくことは極めて重要です。
そこで、冬季の快適な観光地づくりを名目として観光目的税を導入し、財源が行き詰りつつあった除排雪事業の新たな財源にもできる、一石二鳥の目的税になり得るのではないかというのが、ボクのアイデアでした。
手前味噌ながら、当時は観光の国際シンポジウムなどでも私案を披露する機会も得て、海外の専門家などからの肯定的な評価もいただいておりました。

でも当時は観光目的税自体が日本国内では全く世の中の認知を得られていませんでしたから、このアイデアは周辺の誰からも相手にされず、信じられないほどの強い非難とともにボクの妄想のまま消し去られていました。

しかし、あれから10余年が経ち、観光目的税が日本でも注目されるようになってきました。
今はコロナ対応が最大の課題となっていますが、いずれ落ち着いてきた際には、有効な観光振興策、観光財源確保戦略として、観光目的税が再び議論されることと確信します。
その際には、ぜひ、どこでも共通なありきたりの観光振興策にではなく、北海道や札幌の独自の観光課題に対応するための財源として、観光目的税の使途も議論していって欲しいなと心の底から希望します。
雪対策は積雪寒冷地の大きな観光課題だと思いますし、観光目的税の使途としてまさにふさわしいと思います。

まさか生活道路など通常の雪対策事業財源として観光目的税を当てることは適切でないとは思います。
でも、札幌都心部を中心に、空港、JR・地下鉄駅などの主な交通拠点との連携部分や、主要観光ポイントと連絡する主要幹線道路の除排雪などは、冬季間の観光環境整備として観光目的税を当てて、従来の一般財源はその他の生活道路の除排雪や雪対策事業に充当すれば、財源にも幅と柔軟性ができると思います。

市長をはじめとする札幌市の幹部やご担当者には、今後もし観光目的税の議論を再開できる時期が来たら、ぜひ、こういった柔軟で幅広い構想を持って向き合ってほしいと心から願います。
別にボクのアイデアを押し付けるつもりはありません。
でもどんなアイデアであろうとも、独自性が強ければ強いほど、財務省も国土交通省も否定的な見解を見せるに決まっています。
独自性や例外こそが彼らの最も嫌うものですから。
だからこそ、自治体側が必要と思うことを自らが形にしてみて、地域住民を巻き込みながら声を上げていくことが重要です。

大雪の中で札幌の将来をぼんやりと考えたとき、改めて観光目的税の有効性を思い起こしました。
今の枠組みでは異端なことにでも活路を見い出していかないと、そう遠くない未来、札幌は雪に埋もれて辛いだけの冬を迎えることになってしまうのではないか…。
そんな思いとともに、ボクの妄想の一端を記させていただきました。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

コメント

  1. 宮地美樹 より:

    「木を見て森を見ず」ならず「森を見て木を見ず」ですね。facebookでお子様?をバケーション?で抱き上げている写真をサムネイルにしてる時点でZ世代には反感を持たれますよ。

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