「奇跡の英会話教室」の卒業式 ~ 養護学校でオンライン英会話

大好き札幌
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札幌市西区にある北海道手稲養護学校三角山分校では、2021年度からオンラインでの英会話事業を月1度取り入れています。
先日3月4日、高等部の今年度最後のオンライン授業が行われ、卒業する生徒さんに修了証書が授与されました。

同校で学んでいる子たちの多くは、重度の筋ジストロフィーや心身障害などがあって、自由に外出等をするのが困難です。
ましてや外国へ行ったり外国人と交流などといったことは望むべくもありません。

そんな子どもたちに英語に触れて少しでも外国の文化や雰囲気を楽しんでもらおうと、同校でオンライン英語授業のボランティア提供を申し出たのが札幌を基盤にオンライン英会話教室を運営している株式会社Bloom Interanational

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NGOとの提携で繋がったフィリピン人講師たち

Bloom社は、フィリピン最大のNGOである【Gawad Kalinga(GK:ガワドカリンガ)】と提携し、フィリピン人講師によるオンライン英会話を提供しています。
フィリピン人は人件費の安さなどから近年日本でも英会話教師として多用されてきていますが、同社の場合はGKとの提携というところが重要なポイント。
GKは2024年までに500万世帯の貧困を削減することを目標とするNGOで、Bloom社のレッスン料の一部はGKを通じてフィリピンの貧困層の子どもたちが通う保育園などに寄付される仕組みになっています

「No one left behind.=”誰ひとり取り残さない”」を合言葉に、フィリピンとのコミュニケーションを通じてSDGsの実現を目指しています。

通常は保育園などの子どもたちへのオンラインレッスンや家庭向けの個人レッスンなどを展開しているBloom社ですが、そういった背景から生活弱者である障害のある子どもたちにも英語を学ぶチャンスを提供できないかと考え、札幌市教育委員会に申し出ました。
ただ通常、役所や教育委員会でこういう民間企業からの申し出に真剣に対応することは稀なのですが、この話が北海道教育委員会にもつながり、道立の手稲養護学校の現場の先生方が関心を示したことから、2021年春からボランティアでの授業がスタートしたのです。

障がいのある子どもへの授業がこういった形式で行われたのは北海道では初めての試みだったこともあり、昨年9月には北海道新聞でも取り上げられたようです。

「奇跡の英会話教室」初めての卒業生

それから1年が経ち、この授業を受けていた生徒の一人が養護学校を卒業することになりました。
3月4日(金)、この生徒の最後のオンライン英会話授業に合わせて、コースの修了式が行われました。

授業の中では、フィリピンの卒業や卒業式がどんなものであるかを学び、最後にいよいよ修了のセレモニーに移ります。
たった一人の卒業生にはBloom社からガウンが送られました。
そしてそのガウンと帽子を身に着けた卒業生から、画面の向こうにいるフィリピンの講師にお礼の手紙を読み上げます。
続いて、終了証書が手渡され、1年間の授業は幕を閉じました。

このコースを終えた生徒さんには、春からこれまでとは違う新しい生活が待っています。
この養護学校で学んだ英会話が、この後の彼の人生にどの程度影響を与え、役に立っていくのか、私たちにはわかりません。
実質的な仕事やキャリアのという点では目立って役に立つこともないのかもしれません。

しかし、Bloom社代表の藤本さんはこう語ります。

「ここの生徒さんたちは自由に出歩くことこともできない子が多く、海外旅行なんで夢のまた夢。そんな子たちが画面越しに見るフィリピンの街並みや人の姿、講師が話してくれる英語や外国の生活や文化のことなんかに目を輝かせているんです。つかの間の海外旅行体験をできただけで、彼らにとっては掛け替えのない時間だったのではないでしょうか。子どもたちのキラキラした表情を見ていると本当にそうだと確信します。」

小さな中小企業が行政に提案したこの授業がいつまで続けられるのかはわかりません。
ただ、もし行政として、または社会として、こういった子どもたちへの教育の機会が重要だと考えるのであれば、事業者の思いとボランティアだけにいつまでも頼ってはいられません。
社会としてきちんと制度化し、持続的に提供していかなくてはなりません。
それを市などの公教育が担うのも一つの手段だと思います。
また、寄付やボランティアを通じて社会全体として回る仕組みを作っていくこともあり得るのかもしれません。
(残念ながら「寄付税制」が未熟な日本では、諸外国で行うよりハードルは高いと思いますが…)

札幌で生まれた「奇跡の英会話教室」
ここだけで消えてしまうことなく、多くの教育の機会に恵まれない子どもたちに光を灯し続けていって欲しいと思います。
そのために、私たちは何ができるのか??
卒業の衣装をまとった生徒の姿を見て、そう考えさせられる機会となりました。

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