札幌市のデジタルトランスフォーメーンメーション(DX) デジタル推進担当局長に聞く

ICT
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9月1日デジタル庁が発足しました。

札幌市もこの政府の動きを見据えて、今年の4月にデジタル推進担当局を新たに新設。
急速に進むデジタルトランスフォーメーション(DX)を行政としても強力に推進する体制を既に整えています。

私たちの生活を大きく変えるであろうDXの波。
札幌に住む私たちの生活にどのような変化をもたらすのか。
行政は、私たち市民はどのようにこのDX化の波に向き合っていくべきなのか。
デジタル庁の発足をいよいよ間近に控えた先月19日、札幌市に新たに設置されたデジタル推進担当局の初代局長である一橋 基(いちはし もとい)さんと対談することができましたので、その一端をご紹介します。

(聞き手:大好き札幌)

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デジタル化で目指す札幌の未来像

(大好き札幌)
一橋局長、本日はお忙しいところありがとうございます。
本当は局長のお話を聞きたいという方がたくさんいらっしゃるので、通常のセミナースタイルで参加者を募りたかったのですが、コロナの自粛でオンラインでの開催とさせていただきました。
初めての試みなので不行き届き等があるかもしれませんが、今日はよろしくお願いします。

(一橋局長)
よろしくお願いします。
私たちも多くの方々にデジタル化について理解を深めていただきたいと思ってますので、このような機会をいただきありがとうございます。

(大好き札幌)
本日は、札幌市内でデジタルサイネージやLEDビジョンなどの事業を展開しているNET DOOR株式会社さまのショールームをお借りしてお送りしています。
まさにDXがテーマのオンラインセミナーにふさわしい雰囲気です。
NET DOORさんは、昨年コロナの感染拡大が広まってすぐに、デジタルサイネージと消毒と検温を同時にできるD-SIGN Cleanという新しい製品をいち早く開発して、札幌市にも1台寄贈していただきましたよね。
今では道内外から引き合いが絶えないそうですよ。

(一橋)
はい、今も市役所の正面玄関に設置して重宝させていただいてます。
素敵なショールームですね。ショールームのガラスがそのまま大型ビジョンになってるんですね。

NET DOOR ショールーム外観

(大好き札幌)
今年4月から「デジタル化」を推進するというミッションを受けて取り組んでおられますが、一口に「デジタル化」といっても、行政分野のデジタル化という課題もあるし、地域社会・まちづくりの上でのデジタル化、さらには企業活動のデジタル化など様々な側面があって複雑で容易ではないと思いますが、まずは当面どのような姿を目指して、取り組んでいかれるのか方向性や役割についてお聞かせください。

(一橋)
まず、国からは各自治体がどのようにDXを進めていくのか、「基本方針」と「手順書」を作成せよと言われてまして、現在その作業を進めています。
その一方で、国は住民基本台帳や税、福祉など現在は分野ごとにバラバラなシステムを全国統一で標準化する作業を進めており、その仕様が示され次第、札幌市のシステムを当てはめていくという作業に取り掛かります。

(一橋)
さらに、今後オンライン申請へのニーズが高まってきますので、そのための基盤整備や、マイナンバーカードの普及促進もどんどん進めていかなくてはなりません。
残念ながら札幌はマイナンバーカードの普及が遅れていますし。

(一橋)
これらを進めるとなると、当然人材の育成や確保が必要になってきますし、大きな課題となってくるのが「データ」の連携です。
同じ役所の中でも税や福祉など分野ごとにシステムがバラバラで、当然データも連携していません。
今後デジタル化を進め、スマートシティのような未来を創り上げていくためには、これらバラバラのデータの連携のみならず、民間や個人の持つデータと連携させていくことも不可欠です。
これをどう進めていくのか、国でもその基盤について現在検討を進めています。

(大好き札幌)
国の方針に沿って進めていくということに基本なるのだと思いますが、どのようなスケジュール感になりそうですか?

(一橋)
今のところ決まっていないようです。
自治体によってシステムがバラバラ過ぎて必要な作業が全く異なってきます。
小規模な自治体は一般にベンダーなどが提供しているパッケージソフトにシステムを載せているので比較的容易なのですが、札幌のような大都市は独自のシステムを構築しているケースが多く、これらを統一化していくための作業量やスケジュールは国もまだ見えていないようです。
そんな状態ですが、国からは3~4年のうちに全て完了せよと言われてますが(苦笑)。

漏れのない行政サービスの実現 ~ プッシュ型行政への転換

(大好き札幌)
今回のコロナ禍の中でも各種の助成金や協力金などの支援があったわけですが、これまでは行政サービスを受ける際には受ける側がサービスメニューを見つけて、必要な書類をあちこちから揃えて、そして行政の窓口に行って申請しなくてはならない、いわゆる「申請主義」が取られていました。
これだと、申請する側は同じ市役所の中で住民票を取ったり、納税証明を取ったりで手間も掛かりますし、忙しかったり病気やケガで窓口に行けなければ申請ができません。
そもそも制度があることすら知らなければ、本来受けられるサービスに気付きもせずに機会を逃してしまうことになりかねません。
これに対し、必要なデータが有機的に連携されると、単に手続きが簡単になるだけでなく、サービスを必要とする方を行政側で把握して利用を促してあげることが可能になります。
こういういわゆる「プッシュ型」と言われる行政サービスへの転換が今後期待されます。

(一橋)
「プッシュ型サービス」は民間では当たり前ですよね。
例えば車を買ったら点検時期だの車検の時期だのといって次々とサービスに誘導しますよね。
これに対し行政は申請主義のため、自ら申請してこない人にはサービスを提供しないなんてことがまかり通っています。
これからは行政だってそれぞれの分野で持っているデータを連携して、プッシュ型の市民サービスを提供できるようになるべきです。
例えば、お子さんが生まれたら出生届に始まり、ライフステージごとに様々なイベントやサービスがありますので、これらを行政サイドからプッシュ型で誘導し、同時に手続きもオンライン化すれば漏れも利用者の負担も減ると思います。
また、個人の健康データを連携し、ウェラブル端末などで日常の状況を把握していたら、体調や健康診断結果などに応じて適切に健康・福祉サービスを提案できます。

(一橋)
それから、最近は住民票のコンビニ申請などもできるようになり、これもデジタル化の恩恵ともいえるのですが、そもそもデータ連携が進むと行政サービスを受けるために住民票を取るということ自体に意味がなくなるんです。
行政が持っているデータなんですから、行政側で必要なセクション間で共有すれば済むことです。
もちろん、住民側が求めていること以上にデータを用いて余計なことまでする必要はなく、どこまでデータを有効に活用するのかということは重要となってきますが。

行政のデジタル化に立ちはだかる課題

個人情報保護

(大好き札幌)
今お話の最後に「どこまで活用するのか」という言葉がありましたが、行政サービスを提供していく一方で難しい問題となってくるのが提供される側の個人情報の管理で、我が国では行政や公的セクターが個人情報を使用することへの抵抗感はかなり強く、データ連携を進めていく上で非常に大きなハードルとなってくるのかなと思います。

(一橋)
今回デジタル庁が設置されるにあたり、デジタル関連法案が一括で審議されており間もなく成立しますが、その中で個人情報保護法も改正されます。
あまり一般的には知られていないと思いますが、数年前に個人情報保護法が改正され、これからは個人情報も積極的に活用していこうという方向となってきています。
ただ、保護法が扱う範疇は民間の場面であって、行政情報はその範疇になく自治体ごとに個別に個人情報保護条例を定めて対応することとなっていました。
これだと自治体ごとに個人情報の扱いがバラバラなので、今般の個人情報保護法の改正によって行政情報も保護法の範疇として統一基準で扱うこととなり、2年以内の施行を目指して作業が進められています。

(一橋)
ただ、おっしゃる通り、自分たちの情報が行政にどう使われるのかは当然気に掛かりますよね。
住民の方々には、個人情報を活用することでどのようなメリットがあるのか、行政サービスがどのように向上・改善するのかといったことをしっかりと理解していただく必要がありますし、情報についてはきちんと適正に管理・活用していくことも丁寧に説明していく必要があります。
この点は我々に課された重要な課題だと思っています。

(大好き札幌)
住民に近く顔が見えるところにいる自治体が、それぞれの個人情報保護条例の縛りの中でやっていくとなると大変な難儀だなと危惧してましたが、国が法で一括対応してくれるということで何よりです。
ただ法は法として、住民感情として納得してもらえるように働きかけていくことは、自治体の重要な役割ですね。

イントラネット

(一橋)
それから、札幌市のネットワークは構築当時セキュリティの観点から「イントラネット」を採用し、そのまま今に至ってます。
当時はインターネットは危険で組織内でクローズドなイントラネットの方が安全だと考えていたんですね。
そのため今でも、端末をセッティングしたり外部に持ち出す際も、外部のネットワークと連携させる際などもいちいちイントラネットウォールが障壁になり、何をするにも面倒な状態です。
このシステムの再整理が急がれます。

(大好き札幌)
そういえば、以前市長とコロナの給付金などの支援についてお話させていただいたときにも、イントラネットのために作業がスムースに進まないんだとこぼしてましたよ。

地元のIT企業集積が札幌のDXの推進力になる

(大好き札幌)
これからデジタル化を進めていく上で、人口200万人近い大都市である札幌はいろいろ有利な面もあると思いますし、一方で不利な面などもあるのかもしれませんが、強み・弱みをどう認識されていますか。

(一橋)
私自身が長くIT産業の育成に携わっていたこともあり、何といっても地域にIT産業が集積し根付いていることは札幌の最大の強みだと思っています。
市がデジタル化を進めていく上で、地元IT企業の知見や協力が得られるのは本当に大きいです。
また、大学や研究機関などITの研究環境が充実していて、ずっと協力関係を築いてきてますので、こういった方々とDXを一緒に進めていけるという点も札幌の大きな強みだと思っています。

(一橋)
一方で札幌はこれまで首都圏から遠い、距離のハンデが最大の弱みといわれてきてます。
しかし、ICT技術でネットワーク化が進む中で距離のハンデはなくなってくるので、札幌の弱みが解消されてDXが進んでいくのだと期待してます。

(一橋)
また、国からは専門性を持った外部人材の活用も促されており、地域の企業や事業者の力が必要となってきます。
今日会場を提供してくださっているNET DOORさんも地域のIT企業ですし、こういう企業の方々などの力を借りながらDXを進めていきたいです。

(大好き札幌)
札幌は早くからIT企業の集積が進んできましたし、札幌市も随分と関わってきましたから、こういった点は札幌の強みですよね。
NET DOORさんのお話もでましたので、せっかくの機会ですから、会場を提供してくださっている濱田社長からご提言やご質問等はありませんか?

ショールーム | デジタルサイネージ & LEDビジョン|NETDOOR株式会社
ネットドア株式会社では最新のデジタルディバイスと様々なソリューションと連動したサービスが体験できるショールームを開設しています。

(濱田社長)
一橋局長、本日はありがとうございました。
デジタル庁ができ、札幌にもデジタル推進担当局ができてこれからどうなっていくのか注目しています。
そんな中、まず第一に行政の紙ベースでの手続きは時代に即していないので早急に改善してほしいですね。

(濱田社長)
それから、札幌市はベンチャー支援に積極的だとは思っていますが、福岡など先進的なところは規制緩和なども積極的に進めて、新たな事業展開につなげています。
例えば電動キックボードのLUUP(ループ)は福岡で規制緩和などもしながら取組み、国も認めざるを得ないレベルの事業になってきています。
札幌も積極的に規制緩和などを進め、札幌発の新しい事業やITに強い地域を創っていってほしいと期待します。

(一橋)
ペーパーレスは私たちも意識しているのですが、デジタル化の当初は、従来の作業がデジタルに置き換わっただけで、デジタル化して逆に紙が増えたなんてことになりました(笑)。
今回重要なのはDXのX、トランスフォーメーションという概念が加わっていることで、仕事のやり方、サービスの提供の仕方そのものを転換していくことが我々に課せられています。
そこを意識してDXを進めていきたいと思います。

(濱田社長)
ペーパーレスに関連するところで、クラウドサイン(電子署名)などを、札幌市が先導して全国に先駆けていち早く採用していけばDX化につながっていくものと期待します。

(大好き札幌)
規制緩和を進めてほしいということで、福岡の電動キックボードの話も出ましたが、福岡では国の国際戦略特区を利用して「福岡スマートイースト」というエリアを舞台に新しいことをモデル事業的にどんどん進めています。
福岡はこういう新しい取組やチャレンジに本当に積極的な風土であって、さらにこれらの取組みを企業などにも大々的に発信していくことで、福岡は新しいことをやっていける舞台だというイメージを創り、結果として企業活動を市内に誘引することに成功してきてしています。
札幌はそういった意味では対照的にいつも「奥ゆかしい」ですから、負けずに大きなビジョンや構想を示して、企業や事業者に「札幌のDXに関わったら大きな商材や未来の可能性があるんだ」という期待感を持たせるような打ち出しをしていって欲しいなと思います。

(大好き札幌)
そろそろ時間となってきましたので、最後に局長から視聴者へのメッセージをお願いします。

(一橋)
今日、このような機会をいただけたのは大変ありがたいことで、というのは、先ほど奥ゆかしいという言葉もありましたが、我々行政の発信下手を何とかしていかなくてはならないと思っています。
是非、こういった機会をどんどん提供していただき、私たちの取組みを発信していきたいと思いますし、いろいろな意見を持っている方々のところにこちらから入っていって「垣根」を取っ払っていきたいのでご協力よろしくお願いします。

(一橋)
最後に、今日はご紹介する時間がありませんでしたが、札幌は NoMaps という事業に民間の方々と取り組んでいて、「まちを実験場にしてしまえ!」というコンセプトでこれまでいろいろなことをやってきています。
ただ、これまで札幌市は「場を提供しているのだからあとは民間の方々頑張ってくださいね」という姿勢になりがちでしたが、地元の行政としてもっと積極的に何か生み出せるようにしていきたいと思っています。
そうやって皆さんと一緒にやっていくつもりですので、今日もいろいろな分野の方がご視聴だということですし、是非またお声掛けいただくとともに、私たちの取組みにも注目していただければと思います。
本日はありがとうございました!

(大好き札幌)
一橋局長、本日はお忙しいところ本当にありがとうございました。
まだ役所的には未確定なことが多い段階にも関わらず、とても踏み込んだお話をしていただけたなと感じています。
有意義に活かしていきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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