トイレの神様との約束 不条理に憤る子どもたちへ

LIFE
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息子が「トイレの神様」と3つの約束をした。

ことの発端は母親とのちょっとしたいざこざだ。
傍から見たら息子の言い分に納得できるものは全くないが、本人は自尊心を傷つけられたようでいたく憤慨している。

そこで、筆者が心を寄せている「神様」にお出ましいただくことにした。
お盆も近づき、本来なら「仏様」「ご先祖様」がお出ましの時期だが、「神様」にまでご足労いただいて賑やかな夏となりそうだ。

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憤慨

夏休みに突入して、中学1年の息子の生活は普段にも増してだらけ放題だ。

朝からYouTubeばかり見ていたかと思えば、お次はゲーム。
一日中、テレビの前に張り付いているか、iPadと格闘している。
たまに静かだな思ったら寝っ転がってマンガ。。。

コロナ自粛、マンボウ(まん延防止等措置)下の夏休みなので、子どもたちも体を持て余しさぞかし退屈だろう…、と思う。一般的には。

ところがそもそも外で体を動かすような遊びが好きでない我が家の長男は、Wi-Fiが飛び交う屋内にいる方が幸せなタイプ。
不要不急の外出自主が叫ばれている夏休みは、彼にとっては最高のシチュエーションなのだ。

放っておくと宿題はもちろん、ろくに食事もしないありさま。

親としては、一日のタイムスケジュールを一応作らせてはいるが、そんなものはお構いなし。
こちらが口うるさく言わないとスケジュールを立てすらしないし、書いても途端に忘却の彼方へ消えてしまう。


そんなある日、終了予定時刻を過ぎても息子はiPadを止める気配がない。
いつものことだ。

母親が時間が過ぎたことを告げるも、無視する息子。
いつものことだ。

再度警告をする母親。
今度は気のない空返事を返す息子。おそらく何を言われたのかすら分かっていないだろう。
もちろんゲームはやめる気配すらなし。
これもいつものこと。

もう一度警告をする母親。
再度無視する(たぶん聞こえてもいない)息子。

息子に近づき、iPadを奪い取る母親。
抵抗し叫び狂う息子。
毎日のように繰り返される我が家の日常の光景だ。

「切れのいいところで止めるつもりだったのに! かあちゃん横暴だ!」

「切れがいいところに行っても、どうせまた続けるでしょ。」

「いや、絶対止められるからあと10分やらせて!」

「そんなこと言って止められたことないでしょ。」

「今日は止められるんだよ!」

「じゃあ、次から実践して見せてみて。」

「次じゃなくて、今やらせろ!」

「・・・・・」(もう立ち去った母親)

「かあちゃん! ひでえよ! 独裁者! #$%#¥&#!!!!」

「・・・・・」

「何で俺を信用しねえんだよ! 俺は信頼できる、約束を守れる人間なんだ!」

自分を信用しろと憤慨する息子だが、このままだとおそらく明日も同じ光景を目にするだろう。
これもいつものことだ…。

神の力

彼の父親は信心深い男だ。意外なことに。

特定の宗教を厚く信仰しているわけではないが、人類が神や宗教という概念を生み出し、そこに大いなる英知を築きあげてきたことに畏敬の念を抱いている。

旧約聖書、新約聖書、古事記、タルムード、・・・。

原典は決して読みやすいものではないが、歴史を通じてわかりやすく訳された良書がたくさんある。

神の存在を通じた神話は、本当にわかりやすくいろいろなことを示唆してくれる。

彼自身も人生のどん底ともいえる危機に陥った時期、図書館で出会ったポール・トゥルニエという宗教家の本に光を見い出し、それ以降、聖書関連の本や神話などをむさぼり読むことで救われたと思っている。

そんな彼は、親の信頼を勝ち取れずに憤慨している息子の姿を見て、あることが思い浮かんだ。

「そうだ、あの神様に息子の成長を委ねてみてはどうだろう…。」

「トイレの神様に!」

約束Ⅰ 灯

「おい、のび太(仮名)」(注:ダラダラしていて叱られて、憤慨するところが極めて似ていることから、藤子・F・不二雄先生の作品からお名前をお借りしました)

「・・・・・、なに?」
明らかに不機嫌だ。

「お前、母ちゃんに信用されなくて不服か。」

「ああ」

「信用してほしかったら”信用しろ”って叫ぶだけじゃだめだな。信用を行動で積み上げていかないと。積立預金みたいんもんだな。」

「・・・・・」
これも不服そうだ。いかにもうざいという顔で睨んでくる。

「お前、信用される人間になりたいか?」

「ああ」

「じゃあ、いい人を紹介してやる。その人との約束を守ったら信用される人間に近づけるぞ。」

「誰さ?」
息子が関心なさそうに聞く。

「トイレの神様だ。うちのトイレ、いや、うちだけでなくトイレには大概神様がいて、俺たちの行動を見ているんだ。」

「はあ?」

「トイレは密室だから人は結構いい加減な行動を取ってしまいがちなんだけど、そこはどっこい神様が見ている。このトイレの神様と3つの約束をするんだ。」

「なんだそれ?」
ちょっと乗ってきた様子だ。

「人が見ていないところでこの神様との約束を守るのはそんなに簡単じゃない。人間は弱いからな。でも守れたら、お前の行動が自然に変わってくるはずだ。」

「行動が変わる?」

「そう。そしてお前が約束を守ったら、つまりお前の行動が変わってきたら、トイレの神様が母ちゃんや周りの人に気付かせてくれる。」

「ふーん・・・」

「どうだ、やってみるか?」

「わかった。3つの約束って何?」

「よし、教えてやる。一つ目の約束は簡単だ。二つ目、三つ目とどんどん難しくなるけどな。」

「一つ目の約束は?」

「トイレを出るときに電気を消す!」

「電気を消す? それだけ?」

「それだけって、お前ほとんど消すことないだろ! いつも俺が後から消してるんだ。」

「はは、そうだな…。で、二つ目は?」

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約束Ⅱ 想像力

「二つ目を教える前に、ところでお前トイレで大きい方をして、トイレットペーパーが無くなっていたことや使っている途中に無くなったことないか?」

「あるある。」

「どんな風に思った?」

ちょっとはしゃぎ口調で息子が言う。
「やべぇよ、それ。」

「そうだろう。まぁ、交換用のトイレットペーパーがあれば何とか凌げるが、それも無かったら大ごとだ。自分の前に使った奴に頭に来るだろう?」

「そうだな。」

「もう、二つ目の約束はわかっただろ?」

「トイレットペーパーが無くなったら、交換しろってことか?」

「そうだ、自分が使ってトイレットペーパーが無くなったら次の人のために交換しておく。これが二つ目の約束だ。」

「わかった。」

「無くなったら交換するだけじゃないぞ。残り少なくなっていたら予備ロールを取りやすいところに置いてあげられたらいいよな。あと、予備ロールが無くなっていたら補充しておいてあげるのも大切だ。まぁ、これはシチュエーションが許せばだけどな。家なら問題ないだろ。」

「うん、わかった」
もう息子の声から、最初の怒りは消えている。

約束Ⅲ おとしまえ

「三つ目は、前の二つよりちょっと厳しいぞ。」

「何すんの?」

「お前、的に上手に入れられるか?」

「はぁ?」

「小便だよ。きちんと狙いすまして便器の中に命中させているか?」

「当たり前だよ!」

「本当か? ちょっとでもこぼしたことないか?」

「ない! 俺は射撃の腕だけは一流なんだ!」
多少心当たりもあるように聞こえたが、ほとんど関係ない例えで息子は改めて否定した。まあいい。
確かのび太も射撃は得意だったな…、と筆者はくだらないことを思い出した。

「しぶきはどうだ? 便器のふちに跳ねたりしてないか?」

「それはあるな。」
少々きまり悪そうに答える。

「それだ。もうわかっただろ。三つ目の約束。」

「跳ねたオシッコを拭くのか?」

「そうだ。汚した便器をきれいに拭く。これが三つ目の約束だ。」

「これは厳しいな。」
いかにも気持ち悪いという表情で息子が返す。

「そう、これは気持ち悪い。でも誰かがやらなければトイレは汚れ放題だろ。誰がやるべきだ?」

「母ちゃん!」

「アホか、お前。確かに母ちゃんがトイレの掃除をしてくれている。でも、汚した人がすぐ拭くのが一番いいだろ?」

「そうだな・・・。ならダダ(筆者のこと)はやっているのか?」

「俺はやっている。自分が汚した分だけでなく、便器が汚れているなと気付いたときにはトイレットペーパーやトイレ掃除シートで拭いている。」

「ホントか?」
息子の目に疑いの色が浮かぶ。

「本当だ。あるビジネスコンサルタントの本でも読んだけど、そのコンサルはクライアント企業に対して、社員にトイレ掃除させることを勧めているそうだ。」

「トイレ掃除を?」

「そうだ。その人によると、業績のいい企業には共通点があって、その代表的な共通点がトイレがきれいということだそうだ。」

「そうなんだ・・・。」

「小便を拭くのなんて誰でも嫌だし、ましてや誰も見ていないところで進んでやるのは容易じゃない。でも人の見ていないところでもこういう心配りができる人が信頼できるいい仕事をするんだそうだ。」

「ふーん。」
一応納得はしたようだ。

「付け加えるが、小便だけじゃないぞ。」

「もしかしてウ〇コもか⁉」

「もちろん。流しても便器にこびりついていたら、きちんと拭き取る!」

「ウェー・・・、わかったよ。」


ということで、息子はトイレの神様と3つの約束をした。

果たして守れるのだろうか。

でも信用を勝ち得るためには、行動で信用を積み上げていくしかないのだ。

トイレの神様の慈愛のまなざしのもとで頑張ってほしい。

(続く、かも)

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