今年の豪雪を体験し、かねてから温めていた根本的な雪対策事業の改革案などについて、シリーズでこれまで3回ほどご紹介させていただいてきました。
第3回目の前回は、市の除排雪事業以外で地域や町内会などで除排雪やパートナーシップ排雪の財源を確保する奇策として、町内会の「集団資源回収」の積極活用をご紹介させていただきました。
今回も地域でも検討できる除排雪の取り組みについて、実際の事例レポートも併せてご紹介したいと思います。
今冬の大雪による大混乱を招いている大きな要因の一つに、かつては豊平川河川敷などに相当量あった雪堆積場が、近年郊外へと追いやられ、排雪作業の効率が著しく低下してきたことが挙げられます。
豊平川河川敷には今でも多少はあるのですが、数、投入可能量どちらも大幅に減少しています。
雪捨て場が遠くなれば当然運搬の回転が悪くなり、近場であれば一晩の作業で3回転、4回転が可能なものが1回転しかできなくなるなど、同じ時間、同じコストで捨てられる雪の量が著しく減少してしまいます。
特に昨年後半からのガソリン価格の高騰が直撃し、回転効率の悪さがコストに与える影響はかつてないものになっています。
さらに今年のような大雪になれば、排雪トラック自体が交通混乱に巻き込まれ、ただでさえ非効率な排雪作業がさらに進まないことになり、市民の苛立ちをますます増長することになってしまっています。
この悪循環は、ここ数年札幌市の除排雪の質を損ねてきた根本的な問題であり、ボクのブログでも、この「豪雪の札幌で考える」シリーズ第2回目の中で、市内中心部での雪堆積場を確保することの重要性・緊急性などについて触れています。
しかし、実は地域にも有望な雪捨て場がちゃんとあるのです。
以下、少しご紹介していきたいと思います。
公園の雪置き場利用
札幌市では、公園は樹木や道具の破損や不慮の事故などを防ぐため、雪捨て場とすることは原則禁止していますが、町内会が責任を持って管理し、ルールを守ることを条件に公園の雪捨て場利用を一部認めています。
利用するためには、市と町内会で文書で協定を結ぶことが必要です。
令和4年1月現在で、市内約2,500か所の公園のうち、1,519か所が雪捨て場として認められ、727件の町内会が利用しています。
基本的に機械による搬入は禁止で、ママさんダンプなどやショベルでの搬入となります。
労力は掛かりますが、公園が近いご家庭などでは重宝しているようです。
まだ市内でも1,000件ほどの公園が利用されていないので、自宅近くの公園の状況を確認し、使っていなければ町内会から市に申し込んでみることも検討してはどうでしょう。
もちろん、通常の公園利用へのニーズもあるでしょうから、町内会としてのコンセンサス形成は必要です。
昨日(2月10日)、ボクの住む中央区の公園をいくつか見て回ってみましたが、利用されている公園でも、管理や工夫の状況などによって使いやすさや搬入できる雪の量に差が生じているようにも見受けられました。
・公園の中のどこに雪を貯めるのか
・搬入路をどうするのか
・効率よく公園全体を動きまわれる工夫をすることで、奥から手前まで効率よく搬入できるようにする
・単に雪捨て場とするだけでなく、子どもの遊び場にもなるようにする などなど
こういった工夫次第で、利用しやすさも搬入量も大きく変わってきそうですね。
上記写真のような工夫をしている公園は、搬入ルートもわかりやすく内部も明らかに使いやすそうですし、周辺の道路もきれいに除排雪されています。
一方で、ただ開放しているだけの公園だと、無秩序に山ばかり高くなって搬入するのが大変そうですし、中には公園の外にまで雪が捨てられ、道路が狭くなっているような公園もありました。
また、町内会できちんと管理していないと、地域外からトラック等で持ってくる人がいたり、酷いところでは業者が捨てに来たりする事例もあるようです。
公園雪捨て場の例外的な優良事例として、市内で1か所だけ重機での搬入が許可されている公園が中央区にあります。
「宮の森グリーン公園」
この公園を雪捨て場として利用している「宮の森東3町内会」はずっと以前から町内の除排雪に並々ならぬ工夫と努力をしてきており、町内会がきちんと管理することを条件にショベルカーでの雪搬入を許可されています。
ただ、市の担当者によると、この町内会の対応・管理のレベルはあまりにも高く例外中の例外で、通常の町内会では無理だろうとのこと。
他の町内会から要請されても、重機の持ち込みは許可できないそうです。
でも、こういう好事例を多くの町内会などで共有していけると、それぞれの事情に合った取り組みにつながっていくかもしれませんね。
公園は遊具のある遊び場と雪捨て場とに区切られていて、遊び場部分では子どもたちが楽しそうに遊んでいました。
雪捨て場にいるボクは、子どもから「そこに入ったら危ないよ!」と注意されてしまいました(^_^;)
学校のグラウンドを雪捨て場に利用
西区の「山の手南小学校」は、グラウンドを町内会のパートナーシップ排雪の排雪場として開放し、生徒が利用できる雪山として利用しています。
ただ、課題は少なくありません。
・金網などに囲まれているグラウンドへのダンプの搬入口の確保
・生徒の登下校などの動線との整理と安全確保
・春先のグランド利用の遅れと整備の外注コスト などなど
地域としてPTAなどとの合意が取れるのであれば、近隣の学校などと相談してみてもいかもしれませんね。
除雪センターの頑張り
札幌市の除排雪事業は、市から事業委託を受けた民間の建設土木事業者などが行っており、市内各所に冬季間だけ設置される「除雪センター」を指令基地に、連日作業を行ってくれています。
ボクの住む中央区には3つの除雪センターが設置されていて、そのうちの「西地区除雪センター」にお邪魔して、除排雪の様子やご苦労などについて伺ってきました。
写真でお分かりのとおり、円山球場に設置されています。
このセンターは受託業者4社が共同で利用しており、常時6~8名くらいのスタッフが常駐しています。
エリア内の除排雪の計画を立て、また地域からの要望や苦情などにも対応しています。
今年は災害級の豪雪に見舞われているので、年が明けてから連日不眠不休のフル回転。
それでも作業は予定通りに進められずに大変な状況が続いているそうです。
加えて近年、財政的な理由や除排雪を担える人材の減少などから、市は除雪量や排雪量を減らす方法をいろいろと考案し、掻き分け除雪や20cm残しの排雪など試行錯誤を続けていますが、これらが市民に浸透していないことなどから苦情が絶えないこと。
さらに机上の計算と現実は相当違っていて、非効率な方法を強いられることによる作業効率の低下はかなりのもので、それらがもたらすコストアップなどのしわ寄せも現場にいっているようです。
このセンターの所管地域の排雪先は、主に盤渓(中央区)や新川、篠路(ともに北区)。
篠路あたりはかなり遠いので当然回転数は限られますし、盤渓も一見距離は近いようですが、ところがどっこいこの雪堆積場が大変なんです。
夜の山道に入ってからは、現場までの約1kmくらいを時速5,6kmでそろそろと登って行かなくてはなりません。
通っていくのは崖っぷちで、それも雪を踏み固めた不安定な路盤。
もちろんヘッドライト以外はない真っ暗闇。
ほとんど戦場かと思うほどのギリギリの危険作業で、普通のヒトなら怖くて乗ってられないレベルだそうです。
当然、時間的にも体力的・精神的にも一往復が限界です。
一度是非どうぞと勧められましたが、丁重に辞退申し上げました(^◇^;)
中央区の雪捨て場事情はこんな状態なんです。
皆さん、どうかわかってください。
除排雪業者さんにくれぐれも心無い非難なんてぶつけないでくださいね。
それよりも豊平川河川敷や大型の都市公園など、中心部の雪捨て場確保に向けて皆で協力しましょう!
除雪に対するクレームや要望も相当な数に上ります。
今シーズンは、直接センター宛てだけでも既に600件以上のクレームなどが寄せられ、この他に区の土木センター経由でも同じくらいの苦情が回ってきます。
原則これら全てに対応しているそうです。大変な作業です。
ボクもいくつか見せていただきましたが、正直、「こんなことで?」と言いたくなるものが少なくありませんでした。
というか、そういうものの方が多いくらいかもしれません。
中には、かなり理不尽としか言いようのないものも。
今年は市民のイライラも頂点に達していますから、怒りのはけ口にされている感も否めません。
それでもセンターの職員は、電話だけでは状況がわかりませんので必ず一旦は現地に向かいます。
そして、不満を胸に押し込んで対応してくれています。
本当に感謝です<(_ _)>
さて、今回は地域で工夫している雪捨て場の事情や除排雪の最前線で奮闘している事業者さんの実情についてレポートしました。
災害級の豪雪でストレスもたまる毎日ですが、現場の実情や頑張りなどをきちんと理解した上で、自分たちでもできることを模索していきましょう!
また雪関係で興味深いテーマがありましたらレポートしますね。
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